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また桜は散り過ぎて
第7章 休日に出会った偶然
 考えることなく口をついて出た。私の希望だ。
 答えを求めて小西さんの顔を見る。口元を緩めた。
なんて優しい笑みを浮かべるのだろう・・
「もちろんです。こんなにすんなりと自分の生い立ちを話してみようと思えたんですから。
 町田さんの人柄に気を許せたんです、きっと」
その言葉を聞いて、私の心が一気に小西さんに向かって吸い寄せられた。
・・私があなたの気持ちをほぐせたの?・・
意識し出した途端に鼓動がいつにもまして大きく打ち続く。
頬の火照りがやがて体の中心へと飛び火して、潤いを感じているのがわかる。
もしかしてそれを悟られるんじゃないかと恥ずかしくなって下を向いていると、
「ごめんなさい、なんかかっこつけすぎですよね。
 なにこの気障なおじさんは、なんてドン引きされちゃいましたか?」
と、小西さんは声を上げて笑った。初めて聞く大きな笑い声。私も一緒に笑った。
「素敵なお話です。それこそ小西さんの人柄があらわれていると思います」
「ありがとう。ああ、ちょっとお喋りしすぎちゃいましたね。
 すみません、私のことばかりべらべらと。でも・・今日は本当にいい休日になった・・
 ご一緒できてよかったです」
小さく頭を下げてから小西さんが立ち上がる。
もう少し話したい、とも思ったが、彼の思う引き際を尊重することにした。


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