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また桜は散り過ぎて
第9章 さくらバーで知った、今と過去
 開店したばかりの時間。まだ客は私一人。
こういう時に普段はしない話をしたり聞いてみればいいんだ。
「省吾さんは東京の人?ご家族は?」
つまんない話かなと言い訳してみたが、そんなことないよと省吾さんは口を開いた。
「うん、23区の中でも下町丸出しなとこ。
 両親は俺が子供の頃離婚しちゃって、それ以来お袋と二人。
 だけどそのお袋も一昨年病気で死んじゃったんだ。だから俺は天涯孤独ってやつです」
「そうだったの・・」
寂しいであろう気持ちに心を寄せながらも、私の頭の中には別の事が浮かんでいる。
この人も幼い頃に親が離婚していて、さらにはお母さんと一緒に暮らしていた。
まるで小西さんと対になっているみたいだ。
 まさか・・私の頭の中ではとんでもない想像が大きく膨らみだす。
まさか、弟を連れて出ていったお母さんというのは小西さんのお母さんで、
別れ別れになった弟というのが省吾さんだったりして・・


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