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また桜は散り過ぎて
第9章 さくらバーで知った、今と過去
「えっ!」
私は反射的に声を上げた。
なぜなら、カウンターにのせた私の手を、省吾さんの手が包んだからだ。
「あ、あの・・」
体が固まった。唇も小刻みに震える。
瞳は、省吾さんの寂し気で、それでいて求める様な目に釘付けになった。
「両親は愛する相手を途中で投げ出した。親父はお袋という女を幸せにできなかった。
 だけど俺は違う。一緒になった女は一生かけて幸せにする、するんだ・・
 それが俺の男としての信念なんだ」
 私の手を包み込むその手に力が入ってくる。
熱も伝わりだし、私の体の中心に向かってどんどん熱くなっていく。
「省吾さん・・」
「ごめん、なんか熱くなっちゃって、ヤバい感じだよね。
 チャラチャラしてるのがマスター・省吾の売りなのにね」
 さっきまでの真剣な眼差しを急に隠してしまった省吾さん。
本気じゃなかったの?それとも本気なの?っていうか、私に対する気持ちだったの?
それともものの例えなの?・・
 手を離した省吾さんがカウンターに背を向けた直後に店のドアが開いた。


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