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また桜は散り過ぎて
第10章 喫茶・桜葉で知った、過去と事実
「えっと・・それってどういう?」
なんとなくわかるようなわからないような。
小西さんの言いたい事って、いったい・・
「46にもなっていつまでも独り者かって、思われているかもしれませんが、
 これでも過去には結婚の予定もあったんです」
 喋ってもいいですか、とご丁寧に断りを入れる小西さんの、
そういうところが良い人なんだよと言いたいのだが、どうやらそこに問題があるらしい。
どうぞと私も返事をした。
「もう10年になるかなぁ。付き合っている女性がいましてね、
 そろそろ結婚しようかと話をしていたんです。そんな時に別の男性が現れて。
 積極的な男だったんでしょう。彼女は次第にその男に傾いていって。
 そこで私が力強く引き戻せばよかったんでしょうけど、
 キミの思うようにすればいいよと言ってしまったんです。
 彼女はきっと、私に強い意志を見せてほしかったんでしょうけど、
 私は自分の気持ちを二の次にした・・いや、もしかしたら逃げたのかもしれませんね。
 彼女は私ではなくその男を選んで去っていきました」
ああ、解る気がする。もちろん小西さんの気持ちではなく、彼女の気持ちが。
自分のことを本気で、心底愛してくれているなら力づくでも思いとどまらせ、
自分の胸に引き寄せてくれるはず。それをしなかったってことは、
そこまでの気持ちではなかったんだ、と絶望感を抱く女もいるだろう。
そこは、小西さんの失敗だった、と声に出して言えると思った。


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