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また桜は散り過ぎて
第10章 喫茶・桜葉で知った、過去と事実
「小西さんの言いたい事、解りました。良い人なだけじゃあだめなんじゃないかって、
 男としてはだめなんじゃないかってことですよね?」
「そうです、その通りです」
笑ってくれた。苦笑、と言えばいいのだろうか。口角の下がった笑顔だった。
「でもほんとうは・・」
別の理由も・・あるの?・・
「家族が欲しいと思っていないのか。または一人でいることの方がいいと思っているのか。
 いや、家族を作る自信が無いのかもしれない」
うつむき、目を伏せた小西さんだったが、急に細い笑い声を漏らし、
上げた顔の目じりは下がっていた。
「すみません、こんな辛気臭い話を聞かせてしまって。でもね、不思議なんです。
 町田さんには何でも話せる気がして。町田さんにとってはご迷惑でしょうが。
 きっと町田さんなら私のことをわかってくれるんじゃないかって。
 前にも言いましたけど、人柄ですよ」
私は表情を開いた。こんな私を話し相手に選んでくれて、私という人間を認めてくれて。
「そう言ってもらえるなんて、嬉しいです。
 正直言うと人付き合いがうまくないから友達も少ないし。
 人から頼りにされることなんてほぼ無かったから、
 人柄を褒めてもらえるなんて恥ずかしいくらい」
 照れてもじもじしている私との間が持たなかったのか、小西さんが立ち上がり、
もう一杯コーヒーを入れましょうと言いながらカウンターへ向かった。
 だが、壁の時計を見るともう閉店時間を10分ほど過ぎていたので、
慌てて小西さんに声をかけた。

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