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また桜は散り過ぎて
第11章 喫茶店からのクリスマスの誘い
注文を聞いてくれた小西さんは途端に忙しくなり、テーブル客に呼ばれコーヒーを淹れ、
片付けているそばから注文が入りと、とてもカウンター席に座る常連客と
のんびり話などしていられないほどになっていた。
その小西さんが一息付けたのは、私がケーキもコーヒーもきれいに食べ終えた頃だった。
客も半分ほどに減り、騒めくような話し声も落ち着いてきて、
ようやく小西さんもゆったりとした表情でサイフォンを眺めていた。
「あの、もう一杯コーヒーいただいてもいいですか?」
せっかくのカウンター席なのにちっとも話ができなかった。
だから、もう一杯のコーヒーは小西さんとの時間を楽しむためのものなのだ。
「あと1カ月もしないうちにクリスマスですね。窓辺のポインセチア、きれいです」
「草花は季節を一番感じられますから。さりげないものでも大切にしたいです」
毎日鉢植えに水をあげる小西さんの姿を想像すると自然と笑みがこぼれる。
きっと私が仕事に行った後の時間だろうから、
じょうろを持つ小西さんを見かけたことはないが、
一つ一つの花にもしかしたら声をかけながらお水をあげる、そんな人だと私は勝手に思う。
ああ、やっぱり、この人の事が好きだな、と再確認できた気がする。
省吾さんよりも、この人の方が・・