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また桜は散り過ぎて
第11章 喫茶店からのクリスマスの誘い
「町田さん、クリスマスの予定はなにかあるんですか?」
「えっ?クリスマス、ですか?」
突然のクリスマス話題に、びっくりしたのとまさかという期待に手が震えて、
持ち上げていたコーヒーカップが斜めに傾げた。
もうちょっとで中味がこぼれるところだった。
「いえ、今のところは特に・・私、友達も少ないし。小西さんは?予定があるんですか?」
「私もなにもないんです。クリスマスの日は特別なケーキを出そうと思って。
 といってもデコレーションがクリスマスっぽくなっているだけですけど。
 なのでよかったら寄ってください」
 心の中だけで、小西さんに気付かれないようにして、自分を笑った。
もしかしたら誘ってくれるのかという期待を持った自分を笑った。
だけど、もしも現実に起こるのならば、私はその誘いを受ける、受けたい。そう思った。
「たぶん来られると思います。その時は一緒にクリスマスの夜を楽しみましょう、ね?」
小西さんは、嬉しそうに肯いた。そしてまっすぐな瞳で私を見つめた。
店内の、背の低い騒めきさえもぴたっとやんだかのように、二人の周りは静寂に包まれた。
この人も、きっと私のことを好きになってくれている。
そう確信させてくれるほどの温かさのある眼差しだった。

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