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また桜は散り過ぎて
第12章 喜びは戸惑いへ
 心苦しさと闘いながら、それでもきちんと伝えないといけないと、
ため息を交えながら口を開いた。
「ごめん、省吾さん。クリスマスにはもう予定があって・・ほんと、ごめん」
聞いて省吾さんは、私のため息よりもはるかに大きなため息をついた後、
じゃあさ、と今度は打って変わっての笑顔でこう言った。
「俺と二人だけで先にクリスマスしようよ」
えっ!と小さく叫んだまま、私は固まった。
まさか、省吾さんから誘われるなんて。それも・・二人きりだなんて・・
 カウンター越しに私の耳元に顔を近づけて、
「たまには外でメシ食うのもいいでしょ。あそこの、
 ハイアットあたりでディナーなんていいんじゃない?もちろん俺の招待だからさ、
 晴海ちゃんはとびきりのオシャレしてくるだけでいいんだからさ。
 どう?だめ?だめじゃないよね、はい、決まり」
こちらがまだ返事もしていないのに、あれよあれよというまに約束が決まった。
 来週の土曜日、夜7時にホテルのロビーで待ち合わせ。
お店は、毎年クリスマスの前に一日は休みにしているから大丈夫だと言う。
「楽しみにしてるからね」
もう一度、私の耳元に唇を近づけ囁く。かかった息がほんのり熱く、私の肌を刺激する。
小西さんの方が好き、なはずなのに、誘いを断れなかった私。
どっちつかずの気持ちに揺れているからだ。
小西さんを好きだけど、省吾さんに求められたことに喜びも感じていた。

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