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また桜は散り過ぎて
第12章 喜びは戸惑いへ


 12月のホテルは、どこもかしこも人がいっぱいだ。
ロビーにも待ち合わせの人たちがあふれかえるほどで、
時間より15分も前に来てしまった私はどこでどうしようかと歩き回った。

 それにしても・・やっぱり素敵だな、ホテルって。
高い天井、きらびやかなシャンデリア。
贅沢に盛られた花瓶からは、花の匂いが辺りを包んでいる。
せっかくだから写真を撮ろうとスマホを構えていると、背後に人の気配を感じた。
きっと写真を撮りたい人がいるのだろうと素早くシャッターを押してその場を退く。
するときれいですねという声が頭の上から降ってきた。
振り返って見上げると、そこに立っていたのは省吾さんだった。
 私を見下ろしてにっこりと笑う省吾さんは、
いつもお店で見る省吾さんとは全然違っている。
ノーネクタイのシャツにスーツ。明るくはしゃいでいるいつもの省吾さんとは
別人じゃないかと思うくらい、静かな笑みを浮かべている。
「省吾さん・・なんか別人みたい。もちろんいい意味で。素敵だね」
「晴海ちゃんも、すごくきれいだし色っぽいよ。ワンピース姿なんて初めてだもん。
 女を感じるぜ」
ニヤリと口角を上げる顔は、いつものちょっといやらしい省吾さんだ。
 少し照れてうつむいた私の腰に手を回す。
私の体が急激に熱くなる。さあいこうと促されて、そのまま歩き出す。
そんなに体を密着させられたら、私・・



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