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恋とエロス
第2章 泣くほど恋しいひと
 新幹線は夜の東京をあっという間に駆け抜けて、西へと向かう。

 私はハンカチを取り出し、道成を想って流した涙を拭いた。


「あれえ? 泣いちゃってんの?」

 少しかすれ気味の低く響く声とともに、黒い影のような男が現れ、私の肩に手を置く。

「可愛いねえ」

 後ろから抱きすくめられ、頬に乾いた唇を押しつけられる。

「どうする? やめとく?」

 ふざけた調子で囁いてくる彼を、まっすぐ見て首をふる。

「やめない」

 私の答えを聞き、彼は満足そうに笑った。

「グリーン車、ほぼ貸切だよ」

 意味ありげに言って歩き出す彼のあとを、私はクスクス笑いながら追う。

「何する気?」
「時速300キロでセックス」
「……馬鹿」

 真夏なのに黒一色の長袖シャツとスキニーパンツを身に着けた彼の後ろ姿は、均整が取れていて姿勢もとても美しい。むしゃぶりつきたくなる衝動を抑えながら、熱い雫があふれてくるのを感じていた。

 三条匡(さんじょうたすく)。

 私の本能が欲してやまない、ただ一人の男だった。
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