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恋とエロス
第3章 愛でも恋でもない関係
午後11時過ぎ、新幹線はH駅に到着した。
「寸止めもけっこう疲れるな」
そう言ってあくびしながら、匡(たすく)は小型のキャリーを引いてホームに降り立った。
「やっぱり個室にするべきだった?」
声をひそめようともせず、ニヤニヤと私の顔をのぞき込む。東京駅よりさらにまばらな人影しかなかったが、誰かに聞かれないかと、思わず周りを見渡してしまう。
「……本当にすると思わなかった」
到着前に、念入りに手を洗って顔や口もキレイに整えたつもりだが、火照った体はなかなか元に戻らず、歩く足に力が入らない。
「ちょっとした遊びだろ。最後までやってないし」
涼しい顔の匡を見て、射精してないはずなのにどうやって収めたのかと、思わずそこに視線がいってしまう。
「焦らしプレイの次は盛り上がるって知ってる?」
「ここにいる間はしないからね」
地元のホテルで匡と密会なんかしたら、すぐにバレて家の者に知られてしまう。
「はいはい」
匡はちょっと首をかしげ、可笑しそうに言った。
「我慢できるなら頑張ってみて」
悔しい。
私にとって自分がどんな存在なのか、よくわかっているのだろう。
こうして横に並んで歩いているだけで、心拍数が上がり、体の芯が熱くなるのを感じる。理性で押さえつけていなければ、本能のまま彼の体に飛びつき、衣服を破り捨て、押し倒してまたがり、淫らな口づけを交わそうとしてしまう。
どうしてなのか、私自身にもわからない。
匡を知る女は、みんな私と同じように感じるのだろうか。