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恋とエロス
第3章 愛でも恋でもない関係
「ひ、一人寝ですか?」
悠斗は少しの間の後、意味に気が付いたらしく、慌てて私の方を見て、それから運転中の谷田の方へ視線を移した。
谷田はふり向かなかったが、かすかにうなずいたようだ。
「気が利かず失礼いたしました。妹を残して身の回りのお世話をさせていただきます」
「わがままで申し訳ないですね」
「いいえ、滅相もない」
私本人の意志など全く確認しないところが、いかにも志倉の男らしい。
今、匡はあからさまに夜伽(よとぎ)を要求したのだ。
それにすかさず妹を差し出すなんて、あきれた兄だが、そんな決定権が悠斗にあるとは思えない。驚き慌てた様子を見ると予想もしていなかったのだろう。
だから、もしそういう場合どう対応するかということは、谷田の方が言い含められていたようだ。
「万結、失礼のないようにな」
「……はい」
私だって本音では、このあと悠斗と谷田と三人になるより、匡とホテルに泊まる方がずっといい。
悠斗の目をじっと見ると、向こうの方が気まずそうにそらした。やっぱり長兄の陸斗(りくと)に比べると、精神面も鍛えが足りていないようだ。
この兄もだが、家の者たちは私がどうやって匡をH市まで連れてきたか、わかっているのだろうか。
後輩として近寄り、平身低頭の限りを尽くして頼んだとでも思っているのだろうか。まさか、田舎出の小娘の色じかけが通用したとでも?
匡に「三条家の後継者として招待に応じて欲しい」と頼むことが、どれほど恐ろしかったか、きっと家族の誰にもわからない。
一刻も早くホテルに入って兄たちと別れたい。
匡と二人きりになりたい。
三条家の人間としてではなく、ただ一匹のオスとなって私に触れて欲しい。