この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
恋とエロス
第4章 手の届かないひと
翌朝、匡とともに迎えの車に乗り込んだ私は、小さなバッグしか手に持たなかった。
起きてからベッドを出るまでの間、珍しくしつこくねだられ、帰省の荷物は置いたままにして行こうと言われたのだ。
「俺がいる間、万結もここにいてよ」
匡がそう切り出したのは、目覚めてすぐのことだ。
私は裸のまま、情事のなごりの気だるい疲れが抜けず、なかなか起き上がれずにいた。
「私がそうしたいって言ったって、家族は聞いてくれないと思う」
「万結からじゃなく、俺から言うし」
断られるはずがないと思っているらしい。
「じゃあ、そうして」
たぶん祖父は、悠斗のように無条件で応じはしないと思うが、三条の御曹司の要求を断らないだろう。
「そういえば先輩、昨夜のあれ! 私びっくりしたんだからね」
「ああ、夜伽のこと?」
匡は可笑しそうに目を細めた。
「前にそういう接待されたことあったから、言うだけ言ってみただけなんだけど、あんなにあっさり差し出されるとはね」
さらっと、とんでもないことを言う男だ。
「で、このまま最初の約束通り、ただの先輩後輩ってことでいいの?」
「……いい」
匡と継続的な肉体関係にあるということは、家族、とりわけ祖父には知られたくない。夜伽の相手ということなら、一時の関係で済ませられるかもしれないが、親密な仲だと思われてしまうと、とても面倒なことになる。