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恋とエロス
第4章 手の届かないひと
「だって、先輩に許婚者がいるって、わりと有名な話でしょう」
匡の生まれた三条という家は、この国有数の名家であり、並みの企業家や政治家など、太刀打ちできないほどの力を持っているという。
もしその支援を受けることが可能なら、もたらされるものは一時的な富と栄誉だけではない。三条が推す人物は上流の仲間入りを認められ、将来にわたってその権利を保ち続けられるのだ。
だから、三条家の人間は極端に未知の人物を避けるらしい。知人の紹介も軽々とは応じない。
代々、幼い頃から大切に守られ、嘉永義塾で学び、選ばれた上流階級の子弟としか付きあわずに育つ。そして当然のように、その中から結婚相手を選ぶ。
三条匡のその相手は、私がひと目で見惚れた女子の先輩・松丸梨子だった。
「自分で決めたわけじゃないけどな」
そんなたいそうなお家の御子息である匡は、婚約者より何もかもランクの劣る後輩の乳房に頬ずりしながら、むずむずと腰を動かしていた。
「トイレなら、さっさと行ってくれば?」
「でも、万結、俺がトイレ立ったら起きちゃうだろ?」
何を馬鹿なことを。
「可愛い、先輩」
私は手を伸ばし、匡の下腹部を押す真似をした。
「やめろ! もれる!」
大げさに声を上げ、匡はベッドを降りてトイレに駆け込んでいった。素っ裸で、だ。
私はベッドに大の字になって笑い転げた。