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恋とエロス
第4章 手の届かないひと
私が三条匡という人物を初めて目にしたのは、入学まもない頃、新歓イベントの時だった。
郊外にある教養キャンパスの大きな体育館で、彼は二十人ぐらいのチームを率いてよさこいを踊っていた。派手な和装とカラフルなメイクをほどこした男女が舞い踊るパフォーマンスは、躍動感にあふれていて圧巻だった。
よさこいを見るのは初めてではなかったが、彼らは高校時代に全国大会で優勝したチームが母体となって結成されており、海外の交流イベントに派遣されたこともあるらしく、プロのダンサー集団のように洗練されて見えた。
だからその時の観客は新入生だけでなく、大学の職員や附属の生徒たちも、こっそりまぎれ込んで見に来ていたようだ。
その視線の先の中心にいたのが、当時三年生だった三条匡である。
見た目の良さとカリスマ性に満ちた彼について、内部生は「さすがだよね」とよく知った様子で語り、その日のうちに外部生のあいだにも、彼が嘉永義塾の有名人で、旧華族かつ旧財閥系企業グループのオーナー子息であることが知れ渡った。
三条家の直系長男。
それは、私がこの大学に進むにあたって、祖父に「必ず知り合いになるように」と命じられた相手でもあった。