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恋とエロス
第1章 プロローグ

「黙って揉ませろ」

 彼の体がガバッと覆いかぶさってきた。

 おもむろに乳房をめちゃくちゃに揉みしだきはじめる。乱暴なようでいて、たいして力は強くない。

 そんなところも、やっぱり手馴れた様子を感じさせる。
 確認したことはないけれど、この男は相当たくさん女の子と遊んできたんだろうなと思ってしまう。

 嫉妬は感じない。でも、負けたような気がして、なんだか悔しい。

 彼はふざけた目つきで私を見つめたまま、男にしては妙に赤い肉厚の唇で、乳首に吸いついた。強烈に甘く鋭い刺激が、電流のように胸から下腹部めがけて走る。

「干からびたんじゃなかったの?」

 皮肉を言うつもりが、声が上ずってしまった。

「男を枯れることなき泉のようにしてしまう、この素晴らしきおっぱい」

「馬鹿……」

 ちゅぱちゅぱと、わざといやらしい音をたて、彼は執拗に乳首をなぶりつづけた。

 私は両手を伸ばし、彼の首筋に指をはわせた。さらりと乾いた髪の感触。うなじのラインをなぞって両肩へ。さらに移動し、ほどよく筋肉のついた二の腕をつかむ。

 あっちの「彼」とは違う、柔らかな腕。

 しなやかで、時に躍動する筋肉によって硬く盛り上がるこの腕を、私はとても気に入っている。

「先輩、ねぇ、お願い」

「んー?」

 ふざけた顔つきのまま、彼は顔を上げて私の目をのぞきこんだ。並外れて端正な面立ちなのに、わざと滑稽な表情ばかりする癖は、出会った時からちっとも変わらない。

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