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先輩!彼氏にしてください!
第10章 腑抜けた天才
「何を迷うことがあるわけ?」
「い、いや…迷ってないです。迷うことなく先輩の誕生日を優先させただけですっ……」
「は?? どう考えても授賞式が優先でしょ」
「……………っ…」
「しかも約束してるわけでもないし」
「で、でもっ……ほのか先輩の18歳の誕生日は一生に一回しかないですし…っ」
僕の言葉の途中で、ほのか先輩は、深くはぁ…とため息を吐く。
呆れられている……それにとてつもなく不安を感じていると、ほのか先輩は腕を組んで、「あのさぁ」と言葉を続けた。
「谷川くんのそういうところ、本当嫌い」
『嫌い』という言葉がナイフとなって僕の胸に突き刺さる。
一気に地獄に落とされたように目の前が真っ暗になって、足をよろつかせながら、近くにあった椅子に倒れ込むようにして座った。
「……あ、安藤さん、私の立場で言うのもアレだけど…あんまり言い過ぎると、谷川くんが死んじゃうから…。そうすると授賞式にも行けないし、誕生日も祝えないし、ね?」
慌てている早坂先生にほのか先輩は見向きもしない。
「才能がある人って一握りなんだよ? 受賞したかったのに出来なかった人は五万といるわけ。なのに、そんなふざけた理由で行かないとか……」
ほのか先輩の誕生日だからというのは、そんなにふざけた理由なのだろうか……?
どうにもしっくりこなくて涙目になりながら、ほのか先輩を見上げると、先輩が「うっ…」と息を飲んだのが分かった。