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先輩!彼氏にしてください!
第10章 腑抜けた天才
分かりやすい…。そして、すごく単純だ。
次の言葉を探している間に脇で早坂先生が「そうだ」と叫び出した。
「安藤さんも一緒に行こうよ!」
予想外のお誘いに「え!?」と周りのみんなと一緒に声を上げる。
い、行こうって……
「その授賞会場に、ってことですか?」
「そうそう」
「そ、そんな、何も関係ない私が行くのおかしくないですかっ……」
「関係なくないじゃない。君、あの絵のモデルなんだよ?」
私の代わりに、葵ちゃんが「たしかに」と返事をしている。
いやいや、モデルって言ったって……
「ダメです。絶対にダメ」
突然声を上げた谷川くんは凛とした顔で椅子から立ち上がる。
「えぇ!? どうして?? 君のかっこいい姿を愛しの安藤さんに見てもらえるんだよ?」
………愛しの…ね。
谷川くんが嫌がっている理由はなんとなく分かる。
谷川くんのことだからどうせ……
「そんなに色々な人がいるところにほのか先輩は連れて行けません!!!」
やっぱり…ね。
「絵を晒すのだって…本当は嫌なのにっ……」
駄々を捏ねる谷川くんを見て、早坂先生は救いを求めるように再び私のことを見る。
………ほんと…世話が焼ける…。
「…………でも、直接…受賞してる谷川くん…見てみたいかも…なあ」
棒読みなセリフに、ピクリと谷川くんが耳を動かす。
「………か、かっこいい、だろうし…」
さらに、棒読みの言葉を続けると谷川くんはいつものごとく人目を憚ることなく私の手を両手でぎゅっと包み込むように掴んだ。