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先輩!彼氏にしてください!
第12章 欲求不満な彼氏彼女



なんとも言えない香りが漂う中、少しぐらつく椅子に座る。


谷川くんの提案通り、美術室に来た私たちはそこでお弁当を広げている。


反応が気になって卵焼きやらを見ている谷川くんの横顔をじっと見つめた。


「谷川くんみたいにお店みたいには出来てないから」


「もったいなくて食べられないです……」


ハの字に曲がった眉毛に胸がギュッとなるのを感じた。

嬉しいとか、かわいいとか、恥ずかしいとか、色々なことを一気に思いながらも「変なこと言ってないで食べなよ」と可愛げなく返す。


素直でいられないっていうのも結構疲れるものだ。


でも、お弁当をわざわざ作って2人で食べたいというなんて、十分気持ちを露わにしてると言えるでしょ、と自分の中で言い訳をした。



「じゃあ……いただきます」


本当に名残惜しそうに、それでいて嬉しそうに谷川くんはお弁当に箸をつけた。

口に合うかな?なんて心配はしてない。

料理は普段からしてるのでまぁ不味くはないだろうし、谷川くんならどんなものでも絶対に───


「美味しすぎますっ……」


こういうって分かってたから。



「……大袈裟」


「いや、これでも抑えてますよ⁉︎ 本当は叫びたいくらいです。料理人とか目指したらどうですか⁉︎」


突拍子もない発言にもはや驚くこともしないまま、私はフッと笑って自分もお弁当を摘んだ。
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