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Memory of Night 2
第8章 蛍の思い出

「わかればよろしい」
母さんと呼ばれたその人は、組んでいた腕を下ろし、わずかに口元を綻ばせながらそう言った。
神谷(かみや)桃華。彼女は宵の母親だった。
宵に目線を合わせるようにかがみこみ、宵の頭を何回か撫でる。
するとすかさず父秋広(あきひろ)が、桃華に対しても釘を刺す。
「桃華さんも、やりすぎ。自分の子を川に落とそうとするなんて」
「……本気で落とすわけねーじゃん。ばーか。な? 宵」
「……うん」
さすがに本当に川に捨てられるとは思わなかったが、暗闇の中であんなふうにされて怖くないわけがなかった。
微妙な気分で桃華を見ると、彼女の灰色の瞳も同じように自分を見ていた。
「……にしても、おまえホントにあたしそっくりになってきたな? 秋広の遺伝子ちゃんと入ってる?」
突然の話題転換の聞き馴染みのない単語に、宵は首を傾げた。
「……いでんし?」
「……違う男との子だったりして」
桃華は宵の横に立つ秋広を見上げ、どこか嬲るような笑みを向けた。
秋広は慌てて言い募る。
「もう、なんてこと言うの! 宵が信じちゃったらどうするの!」
「わかんねーだろ、意味なんて。こいつまだ九歳だし」
そう言って、宵の頭を今度はくしゃくしゃと撫でまわす。
「やめろってば……っ」
宵は桃華の手を振り払った。髪もボサボサだ。

