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Memory of Night 2
第8章 蛍の思い出

 てっきり本当の母親ではない志穂に遠慮しているだけかとも思ったが、それが一番の理由でもなかったようだ。
 志穂が入院中にしていたバイトのことや、体を売って稼いでいたお金のこと。志穂と関わりを増やし、嘘や誤魔化しが増えていくのが嫌なのだろうと晃は思った。

「今のバイトも、まあ言いづらいか」
「そもそも高校生がやっちゃだめなとこだしな」
「変える気は?」
「ぶっちゃけあの時給は魅力的だよな」
「……まあね」

 晃もそこはそう思う。
 時給が高ければ、働く時間はもちろん少なくて済む。宵の体のことを思えば、願ったりなバイト先だ。
 昨日店を直接見た感じも、引っかかることはあれど、仕事自体はそこまでハードでもなさそうだった。

「ま、いいや。わかったよ、ちゃんと志穂さんには連絡するよ、学校のことも」
「素直じゃん」
「うっせ。ーーつかそろそろ出ないとじゃね?」

 時間を気にしながら宵が言う。

「本当だ。ーーご馳走さまでした」
「お粗末様」

 宵は素早く食器をシンクに運び、水につけた。

「おまえ今日予備校だろ? 皿もあとで洗う」
「宵が? 大丈夫? 雪降らない?」
「降ってたまるか、五月に!」

 鞄を持って玄関に向かう宵の腕を引き振り向かせながら、晃は言った。
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