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Memory of Night 2
第9章 臨時ポールダンサー
亮が口元に笑みを載せる。
宵は手前に座る春加の横に腰を下ろした。
「お客さんいる?」
「あー、三組くらい?」
「少なっ。金曜なんに。やっぱ雨だとだめだな」
春加は腕を組み、休憩室の窓に視線をやった。
今日は朝から雨だった。客入りが少ないのは、そこも関係しているようだ。
「そういえば、一応聞くけど宵くんてポールダンス習ったりとかしてないよね?」
「……ポールダンス、ですか?」
唐突過ぎる質問に、つい反芻してしまう。
「普通の高校生がそんなのやってるわけないでしょうに。そろばんとかスイミングのノリで聞かないでくださいよ」
春加がすかさずそうツッコミを入れる。残念ながらそろばんもスイミングも宵はやってなかったが、ポールダンスを習っている人など周りで聞いたこともなかった。
真面目に聞いてくる亮に、突っ込みたくなる気持ちもわかる。
「だよね。そうしたら、やっぱりハルちゃんに引き受けてもらうしかないかなあ」
亮がちらりと春加に視線を向けた。
春加は唇を引き締め、無言で亮から視線を逸らすのみだった。
二人のやり取りと先ほどの質問の意図がわからずにいると、亮が説明してくれた。
「実はね、来週の水曜日のショーにお呼びしていた先生が、転んで足を骨折してしまってね。来れなくなっちゃって。花魁(おいらん)ショーの予定だったんだけどね。そこのイベントを埋めないとなんだけど、なんせ急すぎてねぇ」
「だから、あたしが誰か代わりを見つけるって言ってるじゃないですか」
「すぐ見つかるかい? 花魁ショーは結構人気のショーだし、楽しみにしてくれてるお客さんは多いよ? その代わりに、誰を呼ぶつもり?」
「……まだ、わかりませんけど」
「ーー君に出てほしいんだけどな、僕は」