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Memory of Night 2
第9章 臨時ポールダンサー
柔らかな口調とは裏腹に、亮の口ぶりからは有無を言わさない迫力があった。
「……嫌ですよ。やめて何年経つと思ってるんですか?」
春加も食い下がる。
そういえば、春加は昔ここでポールダンスをしていたと、晃が言っていた。
「まだまだイケるでしょう。ねえ、宵くんも見たいでしょ? ハルちゃんのポールダンス」
「……まあ」
曖昧に頷くと、春加におもいきり睨まれた。
「ほら、リクエスト入ったよ。集客が見込めないとイベントする意味ないし、穴を埋めるために適当に誰かを見繕うなら、僕は君に出てほしい」
亮の春加に向けたゆったりとした言葉の中に、熱量を感じた。
春加もそれを感じ取ってはいるようで、腕を組み、眉間に皺を寄せてしばらく黙っていた。
やがて、大きなため息を吐き出す。
「ーーマジで今回だけですよ?」
「ありがとう、ハルちゃんなら引き受けてくれると思ったよ!」
亮は盛大に拍手をした。
春加は煙草を潰すように消し、席を立つ。
「宵、もうずっと休憩してていいよ、忙しくなりそうなら呼ぶから」
「え? ずっと!?」
バイトに来ている意味、と思う。
春加はそのまま休憩室を出ていこうとして、ふいに思い出したように振り向いた。
「あ、報酬はちゃんと正規の割合で頂きますからね、もちろん客寄せした分のバックも」
亮の返答など待たず、乱暴にドアが閉まる。
不機嫌さを隠すこともない春加の態度に、宵と亮は思わず顔を見合わせた。