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Memory of Night 2
第9章 臨時ポールダンサー
「……そんなに嫌なもんかね、表舞台に立つの」
苦笑混じりに亮が言う。話しかけられたわけではなく、思わず漏れた独り言のようだった。
「昔はショーによく出てたんですよね?」
「うん、三年くらい前までは、頻繁に出てくれてたよ。ポールダンスがメインだったけど、他のショーにもね。……急に出なくなっちゃったんだよね、なんでだろ。ファンも多かったのに、勿体ない」
亮は残念そうに肩をすくめてみせた。
煙草を一本咥え、ライターで火をつけようとした指が止まる。
「……ごめん、もう一本いい?」
「全然平気ですよ、どーぞ」
「どもども」
亮はにっこりと笑って見せた。
オールバックの黒髪と切れ長の瞳は一見すると怖そうな印象だが、笑うととても温和になる。話し方や話すスピードがゆったりしているのもあり、そこも見た目とのギャップがあった。
「せっかく入ってもらって悪いけど、今日はもう暇そうだから、上がってもいいよ。ハルちゃんあんなだし、僕が送ろうか?」
「え、いいっすよ、歩いて帰るんで」
上がりならそれでもいいが、わざわざマスターに送ってもらうのはかなり気が引けた。
「それとも、彼女のポールダンス見ていく?」
「え?」
帰ろうとして席を立った宵に、亮はいたずらっぽい眼差しを向ける。
「おいで」
促され、煙草の火を消し休憩室を出る亮の後ろを宵も追った。