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Memory of Night 2
第9章 臨時ポールダンサー
「宵、おまえ休憩してろって言わなかった?」
「マスターが、ハルちゃんのポールダンス見に行こって」
「……たく、面白がりやがって。多分すぐ忙しくなるよ。あの人に呼び込みさせるとお客さん止まらなくなるからね、いつも」
「そんなに?」
春加は皮肉げに笑った。
「あの人の言葉は、呪文なんだ。捕まると逃げれなくなる。人のいい顔に騙されない方がいいよ。あいつの言葉を全部鵜呑みにすると、痛い目見る」
「……あんたも見た? 痛い目」
春加の浮かべた皮肉げな笑みが、さらに深まる。
けれどアイラインで縁取られた黒塗りの目は、少しも笑っていなかった。塗り潰された淵の奥に、見え隠れする感情はどういう類(たぐい)のものなのか。
宵には春加に聞いてみたいことが幾つかあったが、今はやめにした。二人になるタイミングはある、その時でいい。
代わりに別の話題を振った。
「ポールダンスって、そんな露出した格好で練習すんの?」
「ポールダンスだからだよ。ポールは金属だし、肌との摩擦で体を支えるからね。布の面積は少ない方がいい。あと、こういうレザー素材も滑らないから、有効なんだよ」
「へー、そういうこと」
きちんと説明されてみれば、なるほど、とは思う。
怪我を防止するため肌は覆うものだと思っていたが、そもそも落下を防ぐために滑らないような格好にするというなら納得だ。
ただ、普段の彼女のイメージとかけ離れすぎていて、どうしても変な感じがしてしまうのだった。