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Memory of Night 2
第9章 臨時ポールダンサー
「春加さん、舞台上の準備終わりましたよ。始めます?」
若いスタッフの一人が、小走りでフロアの横まで知らせに来てくれた。
「うん、急にお願いしちゃって悪かったね、ありがとう。お客さんに声かけてから行くわ。マスターが呼び込み行ったから、暇じゃなくなるかも。持ち場に戻って準備してて」
「わかりました」
スタッフの女の子は頭を下げ、他のスタッフ達のもとに戻っていった。
「おまえはあのおっちゃんの相手な」
春加の目線の先にはやはり土方がいる。
「そんな仕事ねーだろが」
宵も負けじと言い返す。
「ちょっと席に行って、話し相手になるだけでいいから。太いパイプ持ってるからね、あの人、ご機嫌取ってこいよ」
「やだっつの。人を餌みたいに使うな、緊縛イベントの時といい……」
「あ、やっぱバレてた?」
春加は悪びれない様子で笑う。
つい口走ってしまったが、春加は素直に認めた。やはり、火曜日に呼ばれたのは春加が仕組んでいた意図があったからのようだ。
「いつの間にか入れ替わっててびっくりしたよ。次こそよろしく、土方さんの相手」
「……やだっつの。そういうのしねーって言ったじゃん」
「別に、本格的なショーに出ろってわけじゃないしいいだろうが。この顔使わないの勿体ない」
「……っ」
春加にきつく顎を掴まれ、痛みに思わずその手を振り払う。
「あたしが教えてやるよ、賢い稼ぎ方」
春加は宵の返事も待たず、客たちに何か一言ずつ挨拶にまわるとステージに上がっていった。