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Memory of Night 2
第9章 臨時ポールダンサー
「ーー本日ご来店いただいた皆様にお知らせがございます。おくつろぎいただいたまま聞いていただけると幸いです」
ステージ上で、春加はそう挨拶すると、恭しく頭を下げた。
マイクは使わなかったが、よく通る声だった。
一斉に向いた視線をゆっくりと見渡し、続ける。
「二十五日の水曜日に予定しておりました花魁ショーですが、お呼びしていた先生がお怪我をしてしまったため中止となりました。その代わりと言っては恐縮ですが、私(わたくし)がポールダンスを披露させていただく運びとなりました」
土方がパチパチと拍手を送る。すると他の二組の客たちも倣うように拍手をした。
春加はもう一度一礼する。
「来週の水曜まで、たった四日。本当に、無茶ぶりもいいところです」
客たちの中からくすくすと、和やかな笑いが起こる。
「少しでも皆様に楽しんでいただけるショーにするため、この場を借りて練習させていただけたらと思います。もちろんお代は頂戴しません。なかなか見る機会のない練習風景、是非見ていってください」
春加は深々と頭を下げた。
今度は先ほどよりも大きな拍手が起こる。そして顔をあげると、おもむろにジャケットを脱ぎ捨てた。