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Memory of Night 2
第9章 臨時ポールダンサー
高く放り投げられた黒いレザージャケット。その下から露(あらわ)になった春加のプロポーションが、客たちの目を釘付けにする。
彼女はすぐにはポールに触れない。両腕と両足を広げ、そのまま床にぺったりと股をつける。そうして胸を反らし、アップにした髪を振り乱し足を百八十度に開いたまま、上半身をぺったりと床につけた。
すぐに右手の平を床に付け、片手だけで体を持ち上げてしまう。そうしてぬるりとそのまま立ち上がり、側転からの倒立。しなやかな体と一切ブレることのない体操技は、圧巻だった。
ステージには照明も音楽もない。けれど春加の動きはリズミカルで、バックミュージックが聴こえるようだった。
引き締まった体は軟らかく曲がり、まるで軟体動物みたいに動く。
「やば」
「すごいだろう? ……まさかまたハルちゃんのダンスを見れるとは」
興奮気味の土方の声で、ついステージに魅入っていた宵ははっとする。接客中というのを忘れてしまいそうだった。
「どうぞ、もっとお近くでご覧になります? お酒運びますよ」
「え、あ、いや」
土方は首を振る。
「でも私が一番に思うのは君だ」
「別に何番でもいいですよ」