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Memory of Night 2
第9章 臨時ポールダンサー
慌てて取り繕う土方の言葉に、つい素っ気ない返答をしてしまう。こういう言葉遊びのようなやり取りはどうも苦手だった。
「……何番でも嬉しいですよ」
語尾を少し変えて言い直し、話題を戻した。
「来週の水曜日だけだそうです、彼女が表舞台に戻るのは。どうぞ彼女のファンだった方たちにも声をかけてあげてください」
「そうだね、ありがとう。昔の馴染み客にも連絡してみるよ」
「ありがとうございます」
「君も初めてだろう? 楽しむといいよ」
「はい」
宵は土方の前の空いたグラスを下げ、先ほど持ってきたファジーネーブルを代わりに置いた。
「ありがとう気が利くね」
「甘いお酒が好きだと仰っていたので」
上機嫌な土方の横に立ち、宵も春加の練習を見ることにした。
すでに彼女の体はポールの中腹にいた。腕や肘、太ももにポールを挟んで体を支えながら、重力など無視して回転したり逆さになったり両手だけで自分の体重を支えたりする。
露出した折れる肢体や時折投げかけられる彼女の視線は、官能的でエロい。
宵はポールダンスを間近で見るのは先日の双子の子達が初めてだったが、素人目で見ても、春加の凄さは伝わってきた。これで、現役を降りて、数年経ってのダンスだと言うのだからマスターに激押しされるのも納得がいった。