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Memory of Night 2
第9章 臨時ポールダンサー
光沢のある黒いロングブーツのヒールは高く、十五センチ以上あるのではと思う。
「ん? あたしのナマ足が見たいって? チップよこせば脱いでやってもいーけど?」
「どう解釈したらそうなるわけ? 頭ん中めでたすぎだろ。違反だし、危ないだろって言ってんの」
「ヒールは普段から履き慣れてるから平気だよ」
春加は面白がるように笑った。
会話はそれだけで、すぐに途切れる。車内にはいつものようにロック調の曲が流れていた。
いつもなら無理に話しかけたりはしないが、今日は聞きたいこともあり、宵から沈黙を破った。
「さっきのポールダンス、凄かった。あれで数年ぶりってマジ?」
「あー……。まあ、たまに触ってはいたよ。店じゃやってないけど、昔習ってたレッスン場でな」
「……なんでショーに出るのやめちゃったの?」
体の柔らかさも、筋力も、体幹も、プロポーションも、人前での演技に足りない部分などないように思えた。
亮が急に表舞台に立つのをやめてしまったと言っていたのを思い出し、宵もどうしてか気になった。
「嫌になったから。他に理由なんてある?」
「だから、その嫌になった理由は?」
「さあね。知りたいなら、まずはチップ」
「……絶対教える気ねえじゃん」