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Memory of Night 2
第9章 臨時ポールダンサー

 どうせ言わないだろうと思っていたから、春加の反応は予想通りではあったが。
 信号で車が停まった。ガチャガチャした音楽の中に、時折雨の音が混じる。

「別にこれって理由はないよ。ただ虚しくなっただけ、自分を切り売りしてるみたいで」

 春加はジャケットのポケットをガサゴソと漁り、何かを取り出した。それは折り畳まれた紙幣だった。

「今日貰ったチップ。ま、ほとんど土方さんからだけどな」

 春加は紙幣を再びポケットにしまい、無造作に髪をかきあげた。
「昔は比べ物にならないくらいチップ貰ってたんだけどね。際どい衣装でいろんなショーに出たし、誘われれば男の家にもホテルにも行った。媚びを売りまくってチップもたくさん貰ったよ」
「……へー、意外」

 春加の普段の服装や言動は、男に媚びているようには到底思えなかった。奇抜な服装や化粧はどちらかと言えば、女性らしさを無理矢理排除しているようにさえ見える。
 だから余計に、今日のような服装に違和感があるのだ。

「でもふと、なんか全部虚しくなってやめてやった。それまでの自分は丸ごと捨てたんだよ」
「捨てたって、発想やばすぎだろ」

 あっけらかんと言う春加に、つい笑ってしまう。
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