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Memory of Night 2
第9章 臨時ポールダンサー
そんなに簡単に自分のそれまでのスタイルを、捨てられるものなのかと思う。
「その反動で今そんななわけ?」
「そんなってどんなだ」
信号が青になり、車が走り出す。
「……ま、おまえに言ってもわかんないだろーけどね。金で寝たことなんてないだろ? 一夜限りのセックスも、したことないだろう? 恋人に大事に抱かれたことしかないだろ? ーーずっと……」
「……ずっと?」
そこで春加ははっとしたように言葉を切った。
「あ、前……っ」
宵の声で、とっさに急ブレーキをかけた。体が前に引っ張られる。
シートベルトが腹や胸に食い込む不快感に、宵は片目をすがめた。
信号が赤だった。停止線を半分ほど過ぎて、ようやく車は停車する。
「……こえーって」
雨で余計に路面が滑りやすくなっている。こんな日くらい、安全運転で走ってほしいと宵は思う。
だが春加は謝りもせず、表情の読めない顔で前を見ている。
視線は前方に向けたまま、やがてぽつりとこう提案してきた。
「宵。ドライブ付き合え」
「……は?」
青になると同時に、春加の車は急発進した。
「店戻んなくていいのかよ?」
「いい、気分じゃない」
「気分て……つか何キロだしてんだよ、おい……っ」