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Memory of Night 2
第10章 嫉妬
むっとしたように言い返してくる。宵はなかなか食い下がらなかった。
「……ハル姉のこと、信用できない。彼女の車には乗らなくたって、一緒に仕事するんでしょ?」
「……おまえの方が馴れ馴れしい呼び方してんじゃん。仕事ったって、ずっと一緒にいるわけじゃねーよ。それに」
宵は一度言葉を切った。言いたいことを頭の中で整理しているような、そんな表情でしばらく黙っていた。
「別にいつもドライブに付き合わされてたわけじゃないし。……今日はなんかむしゃくしゃしてたんじゃね?」
「……そうやって、彼女を庇うの?」
晃には、今日のような状況で宵がなぜ春加の方(かた)を持つのか理解できなかった。
自然と問い返す声に不機嫌さが混じる。
「庇ってるわけじゃねーって。ただ、なんか……」
「なんか?」
宵は言葉に詰まった。普段思ったままを口にすることが多い気がするのに、こんなふうに歯切れが悪いのは珍しい。
「なんでバイトに誘われたのか、気になるだけ」
「君に一目惚れしたんじゃないの?」
「そういうんじゃねーって絶対。態度見りゃわかるわ。ーーじゃなくて、あの人たまに……」
「もういーよ、ハル姉の話は」
晃はそこで、宵の言葉を遮った。
宵は春加のことになど興味を持っていないだろう。そう思ってたのに、実際はそれなりに興味を持っているようだった。
話しぶりからそれが感じ取れるからこそ、晃は余計に嫌だったのだ。