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Memory of Night 2
第18章 人魚姫

それに浮き輪だって、ビニール紐で縛ってあるだけなのだ。ほどけるか切れるかしたら、沖合いに流されていってしまう。
「……この紐手繰り寄せてみるか」
「岸まで?」
宵は靴を脱ぎ、海に片足をつける。水は昼間とは違い、かなり冷たかった。
「……大丈夫か?」
「うん」
昼間、岩の先にちょうどいい窪みを見つけ、思い付きでビニール紐をくくりつけた。先端近くはスペースも狭く、足場も悪いため、海から紐を掴みに行く以外なかった。
水は緩やかに深くなり、今はすね辺りだ。あと一歩で紐に届きそうというタイミングで、明の声が響いた。
「そこ、急に深くなる……っ!」
寸前で、宵は歩みを止める。
「あたしも紐を掴もうとして……海に落ちたの! 気をつけてぇ!」
必死に声を張り、危険を知らせようとしてくれている。
「わかった、ありがと!」
片足をゆっくりと出し、慎重に底を探る。確かに急に深かった。いっきに腰辺りまで海水に浸かる。
「宵、大丈夫か?」
「……平気」
大山も後ろを追ってくる。
紐を掴むことはできた。……が。
(やっぱこんなんじゃすぐ切れちまう)
紐の二十メートルほど先には浮き輪と明。水の抵抗も加わり、いったいどれほどの力がこの紐にかかっているのか。
「ダメだ、無理矢理引いたら切れる……」
「そんな……ーー明っ!」
「あ、馬鹿……っ」

