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Memory of Night 2
第35章 同室者

「これは確かに、老若男女関係なく落ちるね」
こちらの地域に伝わる雪女は、男を誘惑して連れ去ってしまうというもの。それをモチーフにしているなら、画像を見る限り大成功だろう。
亮は春加にメールを返していた。画像の感想を伝えているのかもしれない。
文面を送信し終えると、珈琲の残りを飲み干し言った。
「無事終わったみたい、プレ撮影大会。あー良かった。一安心だね。実は僕、最近ちょっと忙しくてあまり寝てなかったから、眠気覚ましのつもりでブラック珈琲淹れたのだけど、君との話の方がインパクト強かったよ。ブラックより効くなあ」
言われてみると、切れ長の目の下にはうっすらクマがあった。
「少し休みますか? 夕食まで時間もありますし」
「……仮眠取らせてもらってもいい?」
「はい、俺も勉強してます」
「ごめんね、ありがとう。なら少しだけ。何かあったらすぐ起こして」
「はい」
亮は席を立った。スーツの上着を脱いで用意されていたハンガーにかけ、ソファに横になる。
「ベッドじゃなくていいんですか?」
「うん、ここで平気」
もともと置かれていたクッションを枕に、亮はすぐに目を閉じた。
晃も鞄から幾つかの参考書をテーブルに持ってきた。
五分もしないうちに、ソファーから寝息が聞こえてくる。
(宵もちゃんと休めてるかな)
恋人のことを思いながら、一冊の参考書を開くのだった。

