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Memory of Night 2
第35章 同室者

それから、どれだけ時間が経過した頃か。
部屋の電気を消し、持ち込んだ小型のスタンドライトで晃が参考書を読み続けていると、突然こんこん、と控えめなノックが聞こえた。晃がテーブルを立ちドアを開ける。
部屋の前に立っていたのは宵だった。
「……試し録りお疲れ様。良かったね、無事に終わって。もう着替えたの?」
宵は先ほどの着物ではなく、黒いスウェット姿だった。特殊なメイクも落ちている。
「シャワー浴びた」
「さっぱりして良かったね。さすがにあのメイクじゃ出歩けないか」
晃が苦笑する。
宵は拗ねたような顔で灰色の瞳を細めた。
「……さっさと部屋戻りやがって。この薄情者」
「寂しかった?」
否定されるだろうと思ったが、宵は首を横には振らなかった。
こくん、と一回頷かれ、晃は不意打ちに目をしばたかせる。
「俺も」
寂しいというよりは、他の人に囲まれているのを見ているのが嫌だった。そんな自分勝手な理由で一人で放置してしまった。
「ごめんね。撮影の邪魔になるかなと思って。……ねえ、ちょっと充電させて」
少しずるい言い回しをした。
返事は待たず、晃は宵の腕を引き寄せ頭を抱きしめる。

