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Memory of Night 2
第39章 幸福の形

 彼氏がホストクラブで働くようになって間も無く、急に部屋に来るなと言われた。半同棲生活を送っていたのに私物も一度整理して自分の部屋に持って帰ってほしいと言われた。
 怪しい。彼の態度が変わったのは火を見るよりも明らかだった。
 千鶴がこっそり彼氏の部屋に様子を見に行くと、知らないスクーターが停まっていた。開け放した窓から、女の甘ったるい声が漏れている。
 ショックだった。違う女を部屋に連れ込んでいるなんて。それでも心のどこかで疑っていた結末ではあった。
 ほら、男なんてみんな、違う女に目移りする。それ以来連絡を絶った。数ヵ月後、久々にきた彼からのメールは、営業トークだった。客が少ないから、店に来てくれというものだ。自分を指名しお酒を一本だけ入れてくれとあった。
 アホらしさに笑ってしまう。もう、そんなの恋人ではない。
 千鶴は自分から彼を振った。連絡を絶てば依存はなくなる。それも学んだ。
 二十歳までは居酒屋でアルバイトをしながらどうにか暮らしていた。都会は華やかだが、無限にお金を吸い取られていく。高い家賃や物価で、少ない貯金はすぐに底を尽いた。
 東京ではやっていけず、二十歳になった時に引っ越した。同じ関東でも、都会からは離れた田舎にきてバーで働いた。家賃なども抑えられるし、バーは居酒屋よりも時給が良かった。持ち前の器用さで働くスタッフや客からも好かれ、接客は向いているのかもしれない、と思った。
 そんな時だった。二十一を迎えたばかりの冬、ローズのマスターである亮と出会った。
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