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Memory of Night 2
第39章 幸福の形

「ずっと疑問だったこと、聞いていい?」
「……なんなんだよ」

 ふいに宵がそう口を挟んでくる。

「結局マスターとは付き合ってたの?」
「……そんなことが気になんの?」

 改まって聞いていい? なんていうから、もっと真面目な質問かと思えば。でも、実に子供らしい問いだな、とは思った。

「……さあ、どうだろな。忘れた。好きだの愛だの囁かれたことならあったけど、はっきりと付き合いましょうと言葉にしたことはなかったよ」

 学生の頃はずっと、始まりが明確だった。記念日を決め、理想のお祝いをした。
 一ヶ月、三ヶ月、半年、一年。期間が伸びればそれだけ愛情が強固なものに変わり、崩れることも壊れることもなくなるだろうと信じていた。
 でもそれは、きっと大きな間違いだったのだ。

「……曖昧なままでも心地いい関係もあるって教えてもらった」

 それは本心だった。彼のそばが居心地がいいのは確かだ。今も思う。始まりがなければ当然終わりもない。手に入れたいと願ったことは幾度もあったし、自分が特別でありたいと強く思ったことはある。
 それでも、それが叶わないとわかっても、そばを離れたいとは思わなかった。このままで良かったのだ。
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