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Memory of Night 2
第39章 幸福の形

千鶴は逃げなかった。刺青に舌を這わせ、初めて体を繋げた。自分から、彼に関わることを選んだ。彼のそばにいたいと強く思った。始まりも終わりもなくたって、必要としてくれるならそれで充分だと思ってしまった。
働き始めて数年、店は順調だった。客の一人にポールダンスを習っているという女の子がいて、やってみないかと誘われた。
登り棒みたいなものらしい。千鶴は昔から運動神経もよく、体も柔らかかった。ポールダンスを覚えれば、ショーに出れる。今までは緊縛の受け身役やアシスタントとしてしか店のステージに上がったことはなかった。ポールダンスは、唯一の自分の武器になる。
それからは、二足のわらじだった。昼はポールダンスの教室に行き、夜は店で働く。新しいことをやるのは楽しかった。千鶴はみるみる上達し、一年も経たないうちに音楽に合わせて演技できるようになった。
初めてポールダンサーとして出たショーは、ずっと忘れられない。あんなに興奮した夜はなかった。
千鶴のポールダンスはすぐに話題になり、店の客も増え始めた。
自分へのチップも増えたが、そんなのはどうでも良かった。
店が繁盛すれば、亮が喜ぶ。売り上げを上げることが、彼への一番のプレゼントだった。

