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Memory of Night 2
第40章 罪

ヒステリック気味な母の声に、千鶴は一瞬言葉に詰まった。
「……そう言ったの? お姉ちゃんに電話で」
まさか、と思いながらも問うと、間髪入れずに肯定が返ってくる。
「当たり前でしょう! これ以上我が儘放題されても困るのよ! ねえ、番号聞いたんでしょ? 千鶴から……」
「ーー無駄だと思うけど」
千鶴は意識せずとも突き放したようなニュアンスになっていた。
「お姉ちゃんは多分家には帰らないよ。こっちでようやく自分の居場所を見つけたんじゃない?」
母の、息を呑む気配が携帯越しに伝わってきた。話をしてもおそらく無駄だと思い、千鶴は早々に通話を切るよう話を終わらせた。
「じゃ、バイトがあるから」
「え、千鶴、ちょっと待ちなさ……」
母の言葉を遮り通話を切った。
桃華への激しい嫉妬を感じていた反面、同情の気持ちも残っていた。
こんな時でもまだ、両親は工場の心配をしている。ずっと連絡をしてこなかった娘が連絡をしてきたこと、大切な伴侶を見つけ結婚し、その人との子を授かったこと。
それだけで、どうして喜べないのだろう。
千鶴は酷く寒々しい気持ちでカレンダーを見つめていた。
予定日は二ヶ月後。その言葉が、頭の中をぐるぐるとまわっていた。

