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Memory of Night 2
第40章 罪

 四月の上旬、ちょうど桃華から連絡があった日から数えて二ヶ月目に、千鶴は姉が入院すると言っていた産婦人科に向かった。
 桃華に再び連絡する勇気はなかった。だから直接、姉が今いるのかも、産み終えたかもわからない病院に向かった。もし予定日が伸びてまだいなかったら、どうしようか。看護師は荷物だけでも預かってはくれないだろうか。
 姉に会うのが、怖かった。酷く緊張しながら、入り口を抜け受付に向かう。

「ーー面会ですか?」
「あ、はい」

 話しかけられ、千鶴はびくりとしながらも小さく頷いた。大きな箱を抱えているためか、面会者だと思ったらしい。

「患者さんのお名前、よろしいですか?」
「かし……」

 旧姓を言いかけて、口をつぐむ。結婚しているなら、名字も変わっているはずだ。

「…………」
「どうされました?」
「下の名前だけでもいいですか? 桃華、です」
「……それだとお通しすることができません。失礼ですが、患者様とどのようなご関係ですか?」

 受付の女性の顔が、不審げに細められる。

「あ……」

 千鶴は言葉に詰まった。姉の新しい名字など知らない。この前久しぶりに少し電話で話しただけで、桃華の近況は知らないことだらけだった。考えてみれば、おかしな話だ。
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