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Memory of Night 2
第40章 罪

その場に立ちすくんだまま動けずにいる千鶴に、唐突に、助け船が入った。
「ーー神谷(かみや)、です。神谷桃華。二○三号室に入院しています」
突然隣から、声がした。
千鶴が驚いて振り向くと、そこには若い男性が一人立っていた。
「神谷桃華様ですね。少々お待ちください」
パソコンのキーボードを打ち込むタイプ音が響いて間もなく、看護師はにっこりと笑った。
「お間違えありませんね。どうぞ」
「僕が案内します」
「承知致しました。では、こちらを首からお下げください」
『面会者』と書かれたプレートをそっとかけられた。見舞いなどで病院を訪れた人がすぐにわかるようにだろう。
隣の男も同じようにそれを首から下げている。
「あ、すみません、荷物持ちますね」
そう言って、千鶴が抱えていたダンボールを引き取った。
若い男だった。ひょろっとした体躯に眼鏡、ボサついた髪、口のまわりには髭がぽつぽつ生えている。
お世辞にも顔がいいとは言えないような、冴えない外見だった。
だが、おそらくこの男が桃華のーー。
「あの……千鶴さん、ですよね? 桃華さんの妹の」
「……そうですけど」
ふいに、男の顔が破顔した。

