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Memory of Night 2
第40章 罪

「桃華さん、よく千鶴さんのこと話してたんです……! 会いたがってましたよ、ずっと! あの……こっちです、病室! 昨日産まれたばかりで……うわ……っ!」
男の手から、ダンボールが滑り落ちる。病院の白い床に音を立てて転がった。
「す、すみません……!」
「……神谷さん、病院ではお静かにお願いしますね」
「は、はい、申し訳ないです」
苦笑いと共に先ほどの看護師にそう注意され、目前の男がこくこくと頷く。だがダンボールを拾おうとして、開いた蓋から飛び出してしまった何かに気付き、一瞬動きが止まった。
それはベビー服だった。男は床から拾い上げ、埃を払うときのように優しく布地をはたいた。そして、そっと広げてみていた。
水色の、クマのワンポイントが入ったシンプルなものだ。ベビー服を持つ男の瞳が輝く。
「これ……千鶴さんが!?」
「……は? いや、母が……」
「な、なんて可愛いんだ! ありがとうございます! きっと宵(よい)によく似合う」
「宵……?」
それが二人の、子供の名なのだろうか。
疑問を抱きはしたが、千鶴はそんな些細なことよりも、目前の男のまるで宝物でも見つけた時のような、満面の笑みの方が目に焼き付いた。

