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Memory of Night 2
第40章 罪

秋広に案内されるまま、千鶴は病室に向かった。エレベーターに乗り、歩いている最中、ずっと妙な緊張感があった。
おめでとう。その言葉だけ伝えられればいいだろうか。五年ぶりの彼女は、どんなふうにーー。
「ここです」
秋広の声に、はっとして顔を上げる。
ダンボールを抱えながらも、右手で病室の引き戸を開けてくれた。
そこは四人部屋のようだった。二つのベッドは空いている。左奥と右手前だけ白いカーテンがしまっていて、他の二台のベッドは空いていた。
「桃華さんは奥にいます」
丁寧にベッドのそばまで連れていってくれた。
白いカーテンがわずかに波打っていた。その向こうに映る黒いシルエット。千鶴はつかの間、波打つカーテンを見つめたまま動けなかった。
そっと白いカーテンを開けると、水色の患者衣姿の桃華が産まれたばかりの赤子を抱いてベッドに腰かけていた。
突然現れた千鶴の姿に、彼女の灰色の瞳が大きく見開かれる。
だがすぐに笑みが浮かんだ。
「ーー久しぶり。来てくれるなら連絡しろよ」
そう言って、肩を揺らして桃華は笑った。
最後に見た時は耳が見えるくらいに短かった漆黒の髪が、今では背中辺りまで伸びていた。
寝起きのままなのか、櫛を入れていないらしい髪は多少乱れてはいるものの、それでも精巧な作り物のような顔は変わらず美しかった。

