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Memory of Night 2
第40章 罪
「カフェインはダメだよ、授乳もあるし」
「ちょっとくらい平気だって」
「でも看護師さんが」
「うるせーなあ。秋広は真面目すぎなんだよ」
桃華はダンボールをベッド横の棚に置いてくれていた秋広の太もも辺りを、右足で軽く蹴った。
「もう、足癖悪いって。ガウン捲れちゃうよ」
どこかいたずらっぽく、桃華は笑った。秋広は桃華の乱れた患者衣の裾を直し、千鶴に会釈をしてから病室を出ていった。
「今日はわざわざありがと。それ、渡してって母さんから頼まれて来たの?」
「……それもあるけど。いつ産まれるか気になって」
それは嘘ではなかった。姉に会いたかったから、とは、どうしても言えなかった。
「いつ産まれるかわかんないのにいきなり来んなよ、予定日ズレてたらあたし入院してなかったよ」
おかしそうに、また肩を揺らして笑う桃華。
今度は腕の中の赤ん坊は起きなかった。
「仕事休みだったの? てか、千鶴は今どこで働いてるの?」
「……近くのバーだよ。今日休みだし」
バー、とだけ伝えた。詳しく話したら、桃華には絶対に軽蔑されると思ったからだ。
「へー、酒とか作ってんの?」
「まあ。……いいよ、あたしの話なんか。その子の名前は?」
「あー。宵(よい)」