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Memory of Night 2
第40章 罪
翌日、桃華から着信があった。千鶴は無視した。何日かして再び着信。気付いてはいたが、どうしても千鶴は通話に出られずにコール音が切れるまで見送った。二回目の着信があった夜、一度登録した桃華の名を削除し着信拒否をした。
耐えられなくて逃げ出してしまった。きっと勘繰られた。この、ドロドロした気持ちを姉にも。どうしたらいいかわからずに、一方的に遠ざけてしまった。
幸福な彼女に対しての嫉妬と、そんな彼女の幸せを願えない自分への罪悪感が、千鶴の心を巣食っていた。
離れたかった。忘れたかった。千鶴という存在も、桃華も、母も父も古い工場も故郷も、男たちに犯されたことも、桃華に新しい家族ができたことも、何もかも忘れて、新しい自分として生きていきたかった。
それから千鶴はより一層、店での仕事やポールダンスに打ち込むようになった。ローズにいる時は如月春加という、まったく別の人間になれるのだ。華やかな店にいる時はどうにかまぎらわせることができた。
それでも荒れた家に帰ると、千鶴だった頃を思い出す。降り積もる雪や、工場のプレス音、母の手料理、付き合っていた元カレ達、幸せそうだった桃華と新しい家族。精液まみれで捨てられた、あの夜の自分。