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Memory of Night 2
第40章 罪
最初に手を出したのは、アルコールだった。客に貰った高いウイスキーを、炭酸で割って飲んだ。安い酒との味の違いなどわからなかったが、度数の高い酒はすぐに酔えた。思い出したくないことを思い出さずにいられた。よく眠れもした。
毎晩の酒は、すぐに千鶴の生活の一部になっていった。
煙草も同じような理由だった。それも吸い始めたきっかけは、客だったように思う。当時は店のどこでも吸えた。煙草も酒と同じように、依存させてくれる。どちらかに溺れてしまえば嫌なことを思い出さずに済んだ。
公園で犯された日以降、変な男の影は現れなかった。あの日の言葉を亮に伝えはしなかったが、明らかに亮の態度は変わった。頑なに、春加を家に入れなくなったのだ。店での態度も変わり、閉店作業までさせず途中で上がらされることが増えた。
「今日、部屋に行っていい?」
「……部屋はダメ」
千鶴は亮のスーツを掴み、引き寄せた。半ば無理矢理口付ける。
亮の唇は、煙草の味がした。
すぐに肩をそっと押され、離される。丁寧で優しい仕草だが、拒否の意志は確かにあった。
「最初店に誘ったの、そっちのくせに。あんたも一緒じゃん、どうせ飽きたらポイだろ」
「ん? 一緒に働きたいって思ったから声をかけたんだよ。別に、ポイなんてしてないよ?」
「あれ、ナンパだろ?」