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Memory of Night 2
第40章 罪
亮は堪えきれないとばかりに噴き出した。はっはっはっ、と声をあげて笑う。
「……そんなふうに思ってたんだ。ナンパだと思ったのに店までついてきたのか、ハルちゃんは」
むっとしながらも、千鶴は素直に頷いた。
亮は再び声をあげて笑ったが、否定はしなかった。
「僕基本直感型だから。ハルちゃんを見かけた時、一緒に働いてみたいって思ったんだよ。だから僕からポイなんてしない」
そこまで言って、でも、と付け加える。
「ーー君がここを出ていきたくなったら、いつでも辞めていい。もっと健全な店はいくらでもあるよ。陽のあたる場所がハルちゃんには……」
「ここがいい」
千鶴には一つも迷いはなかった。ここで働きたい。亮のそばにいられるなら、それだけでいい。
亮は困ったように一瞬笑みを見せた。
「はい、じゃあ仕事戻って。あと、一応雇用主だからね。店では僕に敬語使ってね。あとマスターって呼ぶこと」
「はいはい、マスター」
「OK。僕も店にいる間は春加かハルちゃんて呼ぶから」
「ーーここの外でも、ずっと『春加』でいいです。あたしの本名なんて忘れてくれていい」
亮はわずかに、切れ長の瞳を見開いた。理由は聞かずに、黙って頷いてくれた。