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Memory of Night 2
第40章 罪
「如月春加として、最初は上手くやっていけてた。過激なショーにも出たし、店以外の場所で客と会うことも増えたけど、それで新規の客を紹介してもらえることも多かったんだ。店の売上に繋がるなら、汚れ仕事でもいいと思ってた」
千鶴は向かい側の土壁を眺めながら、言った。声が掠れる。腕が痺れ、妙に寒かった。
「なんでそこまでして売上にこだわるんだよ。バイト雇う余裕があるなら、経営が傾いてるわけでもないだろ?」
「……お金を借りられないからだよ。今は知らないけど、裏社会で生きてきた亮には、銀行で工面ができない。少なくともあの頃はそうだった。だから、しくじったら終わりなんだよ。出会ったばかりの亮は、今よりずっと売上にシビアだった」
「あの刺青、やっぱそういうことなんだ。あんたを襲ったやつらもそっちの人間なんだろ?」
「……だろうね。襲われたのはあの一回限り。当時のバイトの子もそんな物騒な話は聞かなかった。もしかしたら、亮が牽制してたのかもね」
直接尋ねたことはなかった。あんなおぞましいことを思い出したくもなかったし、亮に知られたくもなかった。あえて口になどしない。だが、あの時から亮の態度が変わったのは明白なのだ。