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Memory of Night 2
第40章 罪
次に桃華に会ったのは、彼女が突然店に乗り込んできた時だ。何で居場所がバレたのかはわからない。病院じゃ、『バーで働いてる』としか言ってなかったはずだ。
ーーあの日が、あの数分が桃華に会った最後だった。
病院で桃華に会ってから、八年ほど過ぎた頃だった。千鶴は春加として積極的にショーに出演し、集客に尽力していた。ローズで雇うバイトの数も増え、千鶴自身は社員として働くようになっていた。
全てが千鶴の功績というわけではないが、ローズがここまで大きくなったのは自分が居たからという自負はあった。得意のポールダンスに加え、鞭や緊縛、歌やダンスなど、一通り習ったのもこの時期だった。
『春加』目当てに訪れる客はどんどん増えていった。華やかな衣装やメイクでステージに立ち、歓声の中チップを捩じ込まれる生活は千鶴の自尊心を満たしてくれていたけれど、治安がもともと良くなかった店で、客層もいい客ばかりではない。
ホテルや家に誘われ、次第に店の中でも求めてくる男は増えていった。奥のスペースに呼ばれることもあったし、ステージから下りた直後、衣装のままテーブルの下に呼ばれ、そのまま咥えさせられることも茶飯事だった。
気付けば千鶴のように、『如月春加』という偶像も、汚れて堕ちていった。
ーーこうなりたかったわけじゃない。とっくに千鶴の理想からは外れていた。
桃華が現れたのは、まさにそんな時期だった。